2013年8月アーカイブ

 2013年の8月は白鳥座をナノトラッカーで挑戦してみました。

 撮影機材は新改造EOSKissX4に55-250mmレンズと明るい40mmレンズです。 これらのレンズで目標に合わせて、40mm、55mm、250mmと使い分けます。 いずれも四季の森の山小屋のベランダからです。

1.北アメリカ星雲を撮りました。

 2013年の7月中旬以降、雨や曇りといった日が続き、一向に撮影の機会がやってきません。 そんな中8月の2日未明、目を覚ますと珍しく満点の星空。 この機会を逃す手はないと、ナノトラッカーを設置し白鳥座のデネブにカメラに付けた割り箸照準を合わせ、デネブは明るいのでライブビューで焦点を合わせます。 iso3200、f4.0で60秒の露出で20枚の撮影です。

 DeepSkyStackerした画像です。 2013-0802-NorthAmericaNebula.jpg

2013年8月2日未明 2:01より撮影 外気18度C ナノトラッカー使用 EOSKissX4新改造 EF-S 55-250mmの55mm側 f/4.0 iso3200 露出60秒20コマ dark frame10コマをDeepSkyStacker処理 (Flat処理なし)

 初めて狙った星雲としてはこんなものかな。 明るい星が白鳥座のしっぽの星デネブで、その上が北アメリカというんですが、なかなかそうは見えません。 頭を右に傾けると、なんとなくそれらしく見えてきます。 その下のペリカン星雲は全くペリカンには見えません。

2.網状星雲の全景を一枚の画像に

 これは照準合わせが難しいので、ステラナビv9で綿密に準備します。

navi-cygnus1-250mm.jpg レンズは250mmで使用します。 画面は縦に使い、白鳥の中心の星サディルからεギエナーを伸ばした延長線上で、εーζの翼の中間の距離あたりを、心もち延長線上よりも下側に中心点をもってきます。 割り箸照準と自由雲台の組み合わせでは250mmがほぼ限界です。 現場では割り箸の照準が見えるように少し光のある環境で照準します。

 250mm焦点では、f5.6なのでライブビューで焦点を合わせることは簡単ではありません。 明るいうちに遠方焦点をレンズにマークしておいてそれを使用します。 現場ではそのマークを基準に、明るい星でライブビュー焦点で合わせておき、ずれないようにそっと動かします。

 8月9日未明にその機会がやってきました。 段取りよろしく何枚かの位置合わせの後20枚撮りました。 NGC6960の方は色づいて見えないので、果たして画面に有るのか無いのかわかりません。 目くら打ちでもあります。

 撮り終わって気が付いたんですが、露出60秒とするところ、何を慌てたのか30秒(*_*;  その日の深夜撮り直し、このときは思い切って、iso=12800 60sec で、今度は絞り6.3、これはこれでいいんですが、冷静になって反省してみると、ピントがやや気に入りません。

 結局、11日未明に再再度、iso=12800 60sec f=5.6で、ピントも満足、ただしこの時はレンズに露が付きやすく、40枚撮りましたが、満足の画像は約半分程度です。

2013-0811-VeilNebulaTif2-41dstc.jpg

2013年8月11日未明 2:43より撮影 外気19度C ナノトラッカー使用 EOSKissX4新改造 EF-S 55-250mmの250mm側 f/5.6 iso12800 露出60秒41コマ dark frame、bias frameは各10コマ撮影。 キヤノンDPPでレンズ収差補正(周辺光量120%、色収差 色にじみ)した tif画像をDeepSkyStacker処理

  何とか出たという感じ。 周辺減光がひどすぎたのでFlat処理しました。 RAWデータをいきなりDeepSkyStackerしても、やたら周辺減光が出てしまい、flat frameを撮影して使っても、メーカによるレンズデータにはかないませんでした。 さらに bias frame を追加して処理すると色がより鮮明に出ました。

 勢いに乗って、バックグランドが赤みがかってしまっていますが、星雲の紋様を出すのを優先させた処理です。 このあたり、口径で言えば45㎜も満たないレンズとCMOSカメラの限界かな?

 3.広範囲の白鳥座の画像を取りました

 範囲の広い白鳥座を撮ります。 ステラナビによるガイド計画をします。

navi-cygnus2-40mm.jpg サドルとギエナーの中間あたりに中心をもってきます。 40mmレンズではそこより少し下にすると、北アメリカ星雲から、嘴のアルビレオまでが入りそうです。

2013-0809-cygnus.jpg2013年8月9日 22:45より撮影 外気18度C ナノトラッカー使用 EOSKissX4新改造 EF-40mm STM f/2.8 iso3200 露出60秒27コマのうち振動流れの少ない24コマ dark frame10コマをDeepSkyStacker処理 (Flat処理なし)

 これはまあ白鳥座の様子が分かって良い方ではないかな。 中央下の辺りに網状星雲もうっすらと見えています。 画面中央の下の方です。 アルビレオはつぶれて二つに分かれません。

 縮小しない画像をよく見たら、中央の右端画面すれすれに、あれい星雲M27が青く写ってました(^_^)


4.デネブ、ギエナ、サドルの辺りを55mmで撮りました


 8月2日に撮ったもの。 画像処理を上の3っつの後にしたので、ツボを心得てきて、星の検出数も必要以上にすることなく、結構流れ作業で短時間に出来た。

 北アメリカ星雲と網状星雲を入れるように狙ったのですが、盲目うちで北アメリカの方が欠けています。

2013-0802-cygnus1.jpg2013年8月2日 未明 02:49より撮影 外気18度C ナノトラッカー使用 EOSKissX4新改造 EF-S 55-250mmの250mm側 f/4.0 iso3200 露出300秒20コマ dark frame10コマ撮影 DigitalPhotoProfessionalでflat補正のあとbias frameを加えてDeepSkyStacker処理

 サドルの周辺も赤く光る星雲があるんですね。中央左の方に半円で網状星雲が写っています。

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備忘録

北アメリカ星雲: NGC7000 白鳥座(Cygnus) 近くにペリカン星雲(IC5070)とともにひとつの塊で1600光年先らしい。

網状星雲: Veil Nebulaの訳でCygnus Loopともいう。 左側の人の横顔みたいに映るのがNGC6992とNGC6995がつながっている、右の明るい星のとこから出ているのがNGC6960だそうです。 1470光年先にあるそうです。5000-8000年前に超新星爆発をした残骸だとか。

白鳥座の恒星:デネブ、サドル、ギエナー、アルビレオ

ナノトラッカー、新改造EOSKissX4、3軸ギア雲台を上手に使う備忘録のページです。

1. 基本的な使用機材は「ナノトラッカーで夜空を撮影する機材をそろえた」にまとめてある通り。

    ポータブル赤道義 ナノトラッカー
    三脚 SLIK カーボン724FA
    雲台 3軸調整できる雲台 Manfrotto モデル410と、SLIK 724FAについていた自由雲台
    カメラ EOSKissX4新改造またはEOSKissX6i
    カメラレンズ EF40mm F2.8 STM パンケーキレンズ、
        EF-S 18-55mm f3.5-5.6 IS II、
        EF-S55-250mm f4-5.6 IS II、
        EF-S 18-135mm f3.5-5.6 IS
    光害カットフィルター AstrnomikのEOS本体とレンズの間に使うやつ
    方位計 Garmin nuvi2565 カーナビ 北極星が見えない場所のときに使う
    タイマー・リモートシャッター 中国製の安物だが、電池が長持ちして非常によい。

2. 北極星が見えないときの設置とその精度は「超都心で撮るナノトラッカーの極軸設置精度」のまとめの通り。

 ここでのまとめで、以下の条件での使用に耐えられそう。

 レンズ250mm:60秒以下。
 レンズ55mm:5分以下
 レンズ40mm:6分以下
 レンズ18mm:10分以下

 3. 北極星が見えるときの出で立ちと設置は「ナノトラッカーがハワイ島へ遠征」の下の方の画像

 ナノトラッカーの穴に突っ込んだ割り箸と、カメラのフラッシュの所につけた割り箸爪楊枝照準器を頼りに合わせる。 この場合環境にもよるが爪楊枝が暗くてはっきり見えなかったり、自由雲台での位置合わせがゴツゴツしていて微妙な位置だしは困難を極める。5回以上試写をすれば、250mmレンズでなんとか合わせられる。

 自由雲台と割り箸での照準合わせは、100mm位までなら手軽に撮れる。

4. 照準合わせのバージョンアップ。

 nanotracker-velbon.jpg 250mmあるいはそれ以上(試してはいないが)での位置合わせの為、ナノトラッカーからカメラまでの雲台を2連にした。

 自由雲台の先にベルボン(Velbom)のPH248雲台を載せて2連でカメラをバランスよく水平の画角にかまえるようにした。

 この雲台は水平垂直方向への照準は極めて滑らかに移動できるように設計されていて、微妙な調整が楽。

 しかも両軸ともに10度単位ではあるが目盛がついていて微調も目安にできる。

 雲台の仕様ではたった積載重量は1kgまでだが、250mmレンズを付けてほぼ1.0kg。 重いレンズを上向きに使うことが多く、水平で重心が離れない形で使うので実質的にはまだいけそう。

 ナノトラッカーに対しても、カメラの軸に対する力も軸の支えの点に近づける姿になるので理想に近い。

 ここで画角とベルボン雲台の目盛の関係を整理しておく。 これを目安に微調整する。

 レンズ焦点距離  画角横   画角縦  水平1目盛動かすと 

  18mm               64.5度       45.5度  画面で1/6動く
     40mm               45.3度       34.0度  画面で1/4動く
  55mm               23.3度       15.7度  画面で1/2動く
   135mm                 9.7度         6.3度  画面全体に動く  
   250mm                 5.3度         3.5度  半目盛で画面全体に動く